事業のマネジメントと個人のキャリア構築

総合職、一般職、ゼネラリスト、スペシャリスト、等、組織人は会社の制度に合わせたキャリア設計を迫られます。また、キャリアフォーカスか、ロイヤリティフォーカスか、で日々の行動も変わってきます。成果か、汗や残業の量か、悩ましく疎ましい評価が絡みます。

その背景にあるマネジメントの仕組みと表裏一体です。仕事に人が就く米国型か、人に仕事が就く日本型か、働き易さやキャリア構築が異なります。

筆者の経験に合致する面白い記事を紹介します。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんの記事です。

目指すは欧米型と日本型のハイブリッドな働き方

ゼネラリストや総合職は、課長職以上の経営ポジションに就くことがその価値を発揮できるキャリアですが、組織のフラット化、事業の統廃合、役職定年等、そのポジションも不足し、また一旦就いたとしても脆い立場と言わざるを得ません。

スペシャリスト的な生き方を個人も企業も取り入れるべきでしょう。

また、経営ポジションもマネジメントスキルにおいて、スペシャリストであるべきだと思います。

このサイトでご紹介しているとおり、PMはミニCEOですし、PPP体系はSBUのオペレーションそのものを想定した体系です。

標準化団体は改訂の度にこれをシェイプアップしています。マネジメント体系を進歩させ、啓蒙を図っているわけです。

このような背景から、PPPに関わるマネジメントスペシャリストは、経営ポジションや経営オペレーションに関わる事業企画的な組織もオプションに入ります。

筆者自身も事業部の戦略マネジメントや投資マネジメントのスキーム設計に携わり、また、PMOも設計しています。

知見の蓄積と社会での共有は、人材市場の細分化やネーミングと表裏の関係なのです。

働き方改革

働き方改革、ワークライフバランス、等、改革の取組がさかんに報じられています。残業時間の視点であったり、生産性向上の視点であったり、仕事と個人の距離感や意識改革であったりとその課題設定により解決策はさまざまですが、マネジメントの視点では、do right things doing right で語りつくせていると感じます。これが改革の本丸で、就業形態や環境、IT活用は従属的なことと確信しています。

今朝(2017年2月6日)テレビ番組で磯山さんという経済ジャーナリストの働き方改革に関する問題提起が目に留まりました。

上の2点は、よく議論される会議改革や作業改革で、改革に取り組む現場の人たちが課題認識しやすく、解決策や数字的な変革効果が表されやすい課題です。

マネジメントの視点では下の二つが心に刺ささります。

まずは、中間管理職必要?。

これは組織構造の改革に他なりません。PPPで啓蒙している事業推進の方法はプロジェクト型、つまり戦略実行へ各施策の実務責任(プロジェクトやプログラム)とガバナンス責任の二層の単純な構造です。旧来の階層構造の組織は、プロジェクト型推進とのどのように折り合いをつけるか、doing rightへ答えを出す時期に来ていると感じています。

4点目の採算の悪い仕事はやらない、がdo right thingsですね。これは上記ガバナンスメカニズムがうまく働いていれば、その機構が持つスクリーニング機能により、採算のよいことや戦略上の実益(ベネフィット)があることだけが生き残っていくわけです。

結局、働き方改革とは、do right things doing right、に収束し、doing rightの仕組みを導入することこそが、改革実行の本筋に落ち着きます。

PPPを推進している理由がここに言い尽くせています。

2022年働き方改革はこうなる~なぜ今働き方改革なのか。企業も個人も迫られる改革の背景

 

よく耳にする働き方改革もなんとなく他人事でよそよそしい。大半の会社員は、組織の制度や慣習に受身であり、働かせ改革、の方が腹落ちする。わが社も人事や労務が取り組んでいて、残業規制が発表されるだろう、くらいの響きだ。

 

著者の指摘する事の本質は少々異なる。

 

官邸主導のこの取組みを5年後の近未来を予測の上で必然とし、世界的に特殊な日本の企業風土雇用習慣を変える好機と捉える。変えられない企業は淘汰されるのだ。企業は、労働力の減少で、多様な勤務形態による働き手の確保、生産性の向上は必須だからだ。同時に、社員も、AI活用などIT化の進展で、雇用消失の危機を迎える。

 

この背景には、オリンピックがひとつのマイルストーンに置かれる。前回の東京五輪では交通網をはじめとしたインフラが整備されたように、今回は自動運転などAI活用による自動化の急速な進展が計画されているからだ。

 

企業の雇用慣習や人事制度、組織の構造は高度成長期に作られたままだ。終身雇用を前提とした、正社員採用は就社であり、キャリアアップは社内の異動により受身で形成され、全員が経営層を目指すレースに組み込まれる構造だ。キャリアパスも自ら描くよりは、異動に沿って、期待に応えることを動機付けにする生き方だ。

著者は、この慣習化した日本の企業組織や文化を、欧米のジョブ型に対してメンバーシップ型とし、その特異性を指摘する。ジョブディスクリプションが無い、つまり自分の職責の不明確なことが、組織や上司への忠誠心を態度で見せるための不要な残業や居残りを招く原因だ。対するジョブ型は、自分の仕事だけ片付けて帰る。人の仕事に手出しすることは無い。評価は成果に対するもので、成果を出せば、場所や時間にとらわれる必然性は減る。

 

筆者は、日本においてはむなしく響くワークライフバランスも実現の鍵はここだと確信している。組織で成果を達成する仕組み改善に手をつけず、時短による見かけの労働時間の帳尻合わせに終わるからだ。

企業は、忠誠心によるチームプレイでなく、個々人の成果を組織成果に纏め上げていくマネジメント改革が必須だ。これにより、生産性も上がり、また、多様な働き方を提案することで、労働力確保も容易になる。このマネジメント改革に、PPPは活用されるべきなのだ。

 

政府の目論見は、長時間労働の是正、人材育成と流動化、賃金の向上、だ。労働人口が減少していく時代に、働き手を市場に出し、かつ、個々の生産性を上げ国力を維持しようとする取組なのだ。これらを阻害する日本の産業構造の目に見えない部分を大きく変えようとする意図だ。

経営者も社員も自立の機会と捉え、改革を前向きに捉え実践することで、個々人の自由度や企業の生産性が大きく改善し、生まれ変わる。

この5年間を改革の好機と捉え、前向きに挑戦してみる、企業と個々人にそんな動機付けを与えてくれる良書である。

 

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いかがでしょうか? PPPはこれまでPMのバイブル的な裏方メソッドでしたが、働き方改革の狙いを実現する上では、事業経営改革の真ん中に置かれるべき仕組みや組織文化を織り成す体系そのものなのです。

組織のカルチャーについて

 

戦略やマネジメントの仕組みをいくら研ぎ澄ませても、それを活かすのは組織に根付くカルチャー次第であると実感します。品位やビジネスマナーに問題がある組織では、何をやっても成功が覚束ない、それは戦略の実行に必要なコミュニケーションが損なわれるからです。同僚やパートナーをレスペクトし、マナーを尽くすことが戦略実行の必要条件です。つまり、事業組織の三角形の一番下には描かれてはいませんが、品位の層があるのです。

私の社会人の一歩目は外資系企業でした。そこはマナーに厳格で上下の関係なく、’さん’付けで呼び合うこと、作業場所でもネクタイ着用(80年代ですが)、なによりもビジネスマンである前にジェントルマンであれ、と躾けられました。また、取引先もベンダーと呼ぶことはNG、サプライヤーかパートナーと呼ぶ徹底ぶりです。このマナーの上に、洗練されたプロセスや商品の基礎となるアーキテクチャなど、競争優位を築く数々の戦略が積み上げられていたのです。

別の企業での経験です。そこは年功序列制で、皆、入社年度や学歴、実年齢、ポジションを意識します。同期や年下は呼び捨てです。打ち合わせの席などでも、その場の上下関係を決め付けるようなあからさまなコミュニケーションを幾度と経験しました。まず、キャリア採用などプロパー以外の人間はその能力を発揮する以前に辟易としてしまいます。もちろん取引先も従属的に扱われ、成果へ向かう前にパートナーとして同じ目標に向かう動機付けを失ってしまいます。この企業も現在は大企業病に苦しみ、利益も減少し、建て直しに躍起になっていますが、まず再生は困難でしょう。この目に見えない基盤層は組織や企業カルチャーとしてDNA化してしまっているのです。

プロジェクトマネジメントの視点で考えて見ましょう。その仕組みは、言うまでも無く権限委譲で成り立っています。組織ポジションとは別に、実行権限を委任されたPMが目標に向かいます。ここで紹介したような職位や年齢に実行メカニズムとして働く組織とは相容れません。

真のプロジェクト型組織への転換は、組織カルチャーの入れ替えも伴うものなのです。