ポートフォリオマネジメント
● セオリーとして役立つ標準
プロジェクトマネジメントの各標準化団体が、プロジェクトポートフォリオマネジメントの標準、もしくはモデルとして定義しています。
プロジェクトは商品開発系もサービス系も、複数の組織もしくは企業が連携することになり、その品質確保の手法やコミュニケーションプロトコルとして標準化の意義に疑問はありませんでしたが、事業経営の内部のマターに何故標準としてアドレスするのか、不思議に思いました。
しかしながら、マネジメントのキャズムに着目するとその必然が理解できます。
プロジェクトの品質確保には、その環境整備が必要だからです。それはプロジェクトの発足であり、実行中の変化への対応、そして成果の経営への価値創出、とそのライフサイクルにおいて、環境を左右するマネジメントシステムです。
なによりも、経営課題の解決手法がプロジェクトですから、常に変化する経営環境において、その目的である課題とプロジェクトの両面を管理していくことが、プロジェクト成功へ前提とする環境なのでしょう。
● 参考文献
他標準化団体
(つづく)
潜在的キャズム
● 事業計画との整合=課題の管理
標準はプロジェクトポートフォリオマネジメント、つまり課題解決への投資コンポネントがその対象ですが、実際のポートフォリオマネジメントは投資コンポネントのみならず、過去の投資成果の状況(リターンや実効評価)をも含むべきです。
目的は、以下の2点に集約されると考えます。
-変化の把握
-設定課題の正しさ
つまり、課題の管理です。
経営環境の変化とともに、その課題の大きさや質が変化していきます。極端なケースで、課題が課題で無くなった場合は、プロジェクトを中止する、といった判断がありうるわけです。
(つづく)
● 行動計画との整合
ポートフォリオマネジメントの実施には、ふたつの目的があります。ひとつはポートフォリオそのものの戦略整合維持、もうひとつは、コンポネント(プログラム、プロジェクト)の実行モニターです。どちらも変化への対応ですが、この運用の出来不出来が成果を左右します。
戦略とは、設定した課題への解決行動計画であり、戦略の実行が各コンポネントの実行として管理されるため、課題を含めた全体の整合確保のためにさまざまなキャズムがあるからです。
整合の視点は、プロジェクト同様下記3点が主なものです。
課題解決へ成果整合は、外部環境の変化も考慮した、課題自身の確からしさの検証も行う必要があります。
-日程整合
-成果整合
-予算整合
キャズムを繋ぐ知恵
● ガバナンスの実行
実行フェーズでのマネジメント図です。
ポートフォリオマネジメントとはガバナンスの実行です。
対象は二工程にあるコンポネントの状態です。
意図した変革達成への進捗管理
変革の市場での反応
変化への対応
状況のモニターと経営判断の枠組みの出来不出来がガバナンスの効果を左右します。
● 効果的なガバナンスへのコミュニケーション
コミュニケーションの根幹は論点である指標づくりです。
指標の設定が、全体のガバナンスの成否を決めます。
指標設定の条件としては、下記が上げられます。
ベネフィット軸-顧客提供価値、自社アセット強化
財務軸
戦略整合軸
括れば、ベネフィット軸となります。顧客への提供ベネフィット創出、自社アセット強化へのベネフィット創出、等の視点で指標設定です。
実現可能性も含め、計画策定で設定した指標でのコミュニケーションが、効果的なガバナンスへの基本的条件でしょう。
● 事例
某電子部品メーカーの事例です。
括り方は異なりますが、先に示した三つの指標が織り込まれています
>ベネフィット軸
>戦略整合軸
>財務軸
指標化と重み付け含む数値化、スパイダーチャートによる表現で、ポートフォリオを構成する各コンポネントを評価する仕組みです
● 事例
Siemens社は190カ国で様々なビジネスユニットがビジネスを展開し、多数のプロジェクトが実行されていますが、全て同じ評価指標で管理されています。それは、重要度:A~F、リスク:0~3の2桁のコードです。
重要度の要素は、戦略価値xビジネス規模とのことです。例えば、グローバル共通のプロジェクトは一般的に重要度が高く、一方、ローカルな投資は低く設定され、そのランクカテゴリーによって承認プロセスも本社承認から各経営単位承認と差がつけられています。
その指標決定の方法は不明ですが、オペレーションを単純化する上では好例といえるでしょう。ポートフォリオマネジメント上も、その状態が見え易くなります。例えば、0が多ければ、ポートフォリオリスクが高い状態、Fや低位ランクが多いと、重要課題が無いか戦略を確認すべき状態、等。単純で見え易いことのメリットでしょう。